Eifelの庭
4月24、25日、同居人のRalfが所有しているEifelのタイニーハウスに行った。Ralfに庭仕事を手伝ってほしいと言われたからだ。朝から小雨が降っていて、外での作業は大変そうだなと思っていたけど、レインコートとレインズボン、そして防水の作業靴を装着し、しっかりと雨対策をしていったのでへっちゃらだった。空気が澄んでいて呼吸が心地よかった。逆にラッキーだったかもしれない。
この2日間で取り組んだ作業は以下の3つ。
• 松の木の先端を折る作業
• 芝生の除去
• 植物を植える
Eifelの地面のほとんどは大きな岩盤に覆われている。そのため土の層はそんなに深くなく、また土には小石がたくさん混ざっているため、とても硬い。Ralfがここに土地を買ってまず行なったのは松の木の植林だった。今年で5年目となる松の木は、2メートルぐらいの高さになっている。そんなに高くなく、可愛い感じだ。というのも毎年この時期に松の新しく伸びた部分の3分の2を切り取って、成長速度を抑えているとのことだった。そうすることで、幹の太いしっかりとした松の木になるらしい。盆栽みたいな感じだ。
それで僕たちがまず行なったのは、この松の新芽(新枝)の刈り取り作業だ。Ralfがまず手本を見せてくれた。とても簡単で、手で握って折るだけ。力もほとんどいらず、90度傾けるとポキッときれいに折れる。感触はアスパラガスを折る時のそれとほとんど同じ。もっと花粉的なものが飛び散るかと思っていたのだが、雨のおかげかそういうこともなく、とても快適に作業ができた。マツヤニの香りが広がる。いい匂いだ。目がさめる感じ。終わって時計を見ると1時間半ほど経過していた。
少しお茶休憩を挟んで、庭を耕す作業に入った。畳2畳分くらいの面積の地面を芝ごと掘り起こしていく。雨が降っていたおかげで、地面が比較的柔らかく、鍬でサクサク掘ることができた。芝を取り除き、大きめの小石も1箇所にまとめておく。この芝は、Ralfが庭づくりの前段階としてわざわざ植えたものらしい。もともとこの土地は農地として使われていて、そのときの肥料が地面にたくさん残っていた。植物を植えるにはありがたいことなんじゃないかと思ったけど、過度な肥料は、Eifelに自生する植物にとってはむしろ毒になってしまうという。そこで芝を植えて、芝に残留した肥料を吸わせ、あとで芝ごと取り除く必要があるのだと話してくれた。
Ralfが目指す庭は、ドイツでよく見られる“アメリカ式”の庭とは異なる。ドイツの庭というと、芝を短く刈り込んで保つスタイルが主流で、最近では芝刈りロボットが黙々と作業している姿もよく見かける。僕もこれらの庭は美しいと思う。だけど、このアメリカ式の庭には生き物が生息できないらしい。ここでいう生き物というのは、鳥であったり、小動物であったり、昆虫であったりする。ドイツではこの庭が、生き物が減る大きな原因になっている。
ドイツにも「ナショナルパーク」と呼ばれる自然豊かな場所がいくつかある。そこにはたくさんの生き物が生息し、生態系が形成されている。しかし問題は、そのナショナルパークとナショナルパークの距離が離れていること。そのため、昆虫は生まれたその場所から遠く離れた別の生態系にアクセスすることができない。これは自然な生態系形成において大きな問題となっているらしい。
Ralfが目指すのは、それらの生き物が休憩できるような場所を作ることだ。芝を刈りすぎない、木を植林する、だけど隣人から苦情が来ない程度には美しく保つ。そうやって、生き物が食事をしたり宿泊できる場所を目指している。とても素敵な考えだなと思った。僕は虫は得意ではないが、その考えには共感できる。このような話をしながら、植物を植えるための下準備を済ませるところでこの日の作業を終えた。
次の日、植物を準備してくれたAstritがやってきて、植える前に簡単に植物の説明をしてくれた。
Jakobs-Kreuzkrautは持ってきた植物の一つとよく似ていて毒がある、とか、Nickendes Leimkrautは夜に花が開き、蛾にとって大事な植物だということなど、他にもたくさん話してくれた。とても興味深い話ばかりだった。それから植物を植えた。Astritは20種類、40株くらいの植物の苗を持ってきていて、それを昨日準備した2畳のスペースに配置していく。彼女には迷いがなく、素人目からは「この間隔が狭すぎる」とか「広すぎる」とか疑問に思うことばかり。だけどそれは、植物が成長したときのサイズを想定していると説明を受け、とても驚いた。それはすごいことだと思った。未来視と言っても過言じゃない。僕たちにはまだ見えていないものが、彼女には見えていた。
配置を済ませるとAstritは帰って行った。僕とRalfは二人で黙々と植物を植えていく。僕はなんだか直に土に触れたくなって、手袋を外していた。スコップで土を掘る。小石がたくさん混ざっているから、簡単ではない。手で石を掴み、石を集めている場所に放り投げる。取りこぼしていた芝の根も掴んで放り投げる。土は冷たい。冷たさに皮膚が反応して痒くなるかなと思っていたのだけど、畑仕事というのは、見ているより全身を使うようで、手先まで暖かく、手についた土はすぐに乾燥していく。ミミズもたくさんいて、十何年かぶりに手の上に乗せてみた。知らないうちに大きくひらいてしまっていた生き物との距離が、急に近くなった。全く嫌な感じがしない。子供の頃虫取りをしていた時の感覚が戻ってきた感じ。
穴を10センチぐらい掘って、苗をプラスチックのカップから取り出し、根をしっかりほぐして、土をかぶせて少し押し固める。全部植え終えたらすぐに水をかけて、作業を終えた。そんなにハードに動いたつもりはなかったけど、全身が筋肉痛になっていた。









